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アンティークメーカー別 

リズムミシン Rhythm の歴史

2012-09-21 (Fri) 10:14
LEADミシンに続きリズムミシン(RHYTHM)についても歴史をご紹介したいと思います。

日本のミシン リズムミシン1
以前の写真の使いまわしですが…

リズムミシンの歴史は、もともとは「中島飛行機株式会社(1917~1945年)」に始まりました。軍用機を作ることを目的とした会社です。

第二次世界大戦後、社名を「富士産業株式会社(1945~1950年)」に変更し、その時にリズムミシンの製造販売を始めたようです。

終戦後のGHQによる財閥解体によって富士産業株式会社は解散になりましたが、
各地の工場などが事業を引き継ぎ、現在では富士重工などの名立たる企業になっています。

その後、リズムミシンを製造していた浜松工場は「富士精密工業株式会社(1950~1961年)」となり、自動車部品を作るようになって、「プリンス自動車工業」になり、紆余曲折を経て現在は「THKリズム」として営業を続けています。



wikipediaの中島飛行機の記事からの引用ですが、

創業の辞「思うに日本の防衛はお金の掛からない新兵器を基礎とした戦い方を見つけてゆくしかない。戦艦一隻を建造するには莫大な費用がかかるけれども、飛行機なら戦艦一隻の費用で三千機が作れる。(これに魚雷を積めば)その力は戦艦よりも優れている。飛行機は1月で完成する。だから民間なら1年に12回計画を変更できる。しかし国営は1年単位の予算計画だから年1回だ。日本の飛行機工業は官営で民間企業中心の飛行機先進国の欧米と向い合っている。今、民営飛行機会社を作り官営中心の流れを変えなければ国家の運命はどうなるのだろう。」…現代語訳


こうして日本の軍事力の強化とともに急速に発展を遂げるが、米軍による戦略爆撃の主要な攻撃目標とされ、多くの工場は破壊された。さらに破壊を免れるための疎開作業で生産は停滞した。敗戦でGHQによって航空機の生産はもとより研究も禁止され、二度と軍需産業に進出できないよう、12社に解体された。技術者の多くは自動車産業へ転進。日本の自動車産業の発展に多大な貢献をした。



国を守るという夢から始まった会社が作ったミシンです。軍事技術ではありますが、男としては壮大な夢から創めた事業と言うところに感じ入ってしまいました。
戦後アメリカの命令により仕事や生活基盤を奪われた技術者は悲観したに違いないと思いますが、培った技術で自動車産業の発展をもたらしたと言うのに、不屈の闘志を感じます。

昨今の領土問題や、日本の技術流出の問題、昨年の東北の大震災の復興問題について、このミシンの歴史から
教訓や激励を感じることが出来るのではないでしょうか?

THKリズム株式会社
http://ja.wikipedia.org/wiki/中島飛行機
http://ja.wikipedia.org/wiki/THKリズム
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ALL LEADミシン製造元は現存する会社!

2012-09-03 (Mon) 14:08

先日ALL(LEAD)ミシンの糸の掛け方についてお客様からお問い合わせがあり、メールでやり取りをいたしました。
LEADミシンについて久しく記事にはしていなかったので、あらためてご紹介します。

アンティークミシン LEADミシン4

LEADミシンの会社は、All Lead ミシン製作所という名前で、後にナカジマALLミシン製造所になりました。
なんと!現存する会社です。

中島オール株式会社
http://www.nakajima-all.co.jp/

大正時代からある会社です!すごい!
詳しくは社歴に書いてあります。

LEADミシンをネットで探すと、
写真のように丸っこいミシンと、
それを少し平べったくしたようなミシン、
そして一番古いシンガーのトイミシンを模倣した小さなミシンが出てきます。

いずれも糸一本で縫うミシンで、チェーンステッチ(単環縫い)と呼ばれる縫い方が出来ます。
今でもジーンズのすそなどに見ることができます。
LEADミシンでデニムが縫えるかまた試したことはないですが、
おそらく機械が(鋳物の品質的に…)無理しますのでお勧めしません(^o^;)

ミシンが会社にとって大事な製品だった、家庭でもミシンが家族の一員だった、
そんな時代があったということに感謝しないといけないと感じる機会になりました。

Bradbury & Co.Ltd.

2009-03-24 (Tue) 20:00
英国そしてヨーロッパで最も古いアンティークミシンメーカーBradburyのご紹介です。

Bradbury Family ca.1890
アンティークミシン ブラッドベリー1
フィドルベース(バイオリン型)が特徴的で魅力あるアンティークミシン。ベッド中央のバラ柄は稀少。

Soeze(sew easy) ca.1898
英国アンティークミシン Bradbury SOEZE(ソーイージー)
短期間しか生産されなかったSoezeと呼ばれるアンティークミシン。後年のBradbury Family V.S.シリーズのモデルとなりました。

Bradbury High Arm ca.1900
アンティークミシン Bradbury High Arm Family
当時性能が良かった独逸ミシンに対抗したアンティークミシン。赤と金彩で象られた花柄は、英国アンティークそしてBradburyらしいデザインです。

Bradbury's Family V.S. ca.1920
英国アンティークミシン Bradbury V.S. その1
かなり実用される時代に入ってき始めた頃のアンティークミシン。他社がシンプルなデザインになる中、やはりフローラルデカールにこだわったあたりは英国プライドだったのかもしれません。

Bradbury & Co.Ltd.
Bradbury & Co(ブラッドベリー・アンド・カンパニー)は1852年に英国そしてヨーロッパ初のミシン製造会社として設立された古いミシン会社です。Bradburyの製造したミシンは当時評価が高く、1867年マンチェスターの品評会を皮切りに、その後はヨーロッパ各地(リヨン・パリ・ウィーン・ロンドン・アデレード...など)で開催された国際博覧会で相当数の金賞を受賞しています。トレードマークは、ワーテルローの戦いでナポレオン軍を倒し英国を守った英雄、ウェリントン伯爵です。

Willcox & Gibbs

2009-03-02 (Mon) 22:58
こちらは東京から修理のご依頼をいただいた100年以上経たWillcox & Gibbsのアンティークミシンです。
アンティークミシン Willcox & Gibbs
このミシンはチェーンステッチで上糸だけで縫っていきます。

アンティークミシン Willcox & Gibbs
エンブレムもかっこいいです。このミシンそのものを象っています。

アンティークミシン Willcox & Gibbs
この糸立て(というか横向き)は珍しいですね。

アンティークミシン Willcox & Gibbs
実はこのミシンは正式名称を「Willcox & Gibbs Automatic Noiseless Sewing Machine」と言います。
何がAutomaticかと言うと、上の写真の右に糸をぐるっと通している部分がオートマチック・テンション、つま自動糸調子なのです。100年以上前のミシンなのに優れモノですね。
またNoiselessというだけあって相当静かに縫っていきます。縫うことに関しては、手縫いの次に静かといえるでしょう。

Willcox & Gibbs Sewing Machine Company
1857年にアメリカで創業し、アメリカとヨーロッパ向けにチェーンステッチのミシンを生産していました。
このミシンは当初は糸調子は手動でしたがのちに自動糸調子機能が追加されました。特に手廻しミシンは英国で生産され主にヨーロッパ市場に出回っていたようです。一方、アメリカではモーター式のものを良く見かけます。
この会社は1973年まで営業を続けていました。